ブログで初めて、当院のコンセプトに近いテーマを取り上げてみます。
これまでの臨床経験を振り返ると、ストレッサー(ストレスの原因)は人間関係がほとんどのような気がしています。経験バイアスがかかっているとは思いますが。
もちろんお金の問題(貧困や借金、相続など)が原因のようにみえる場合もありますが、根本的には人間関係に帰着されると考えています。お金の問題は、人間関係と絡むとストレスが増幅されるように思います。なぜでしょうか。他方で、弁護士さんなどは争いごとの背景にお金の問題をみているでしょうから、違った見解をもっているかもしれません。
ただし元も子もないことを言ってしまうと、お金は「愛情の代替物」であり、人間関係は「愛情の交換機能」であり、どちらも「愛情のやり取り」がメインテーマです。どちらも、愛情がもらえないと欲求不満からこころの不調に繋がっているといえてしまうのです。
臨床をやっていてよく思うのが、「男性の人間関係はシンプル、女性の人間関係は複雑すぎる」という事態です。もちろんLGBTQ+が認知されてきており、現代の様相はかなり変わってきているとは思います。しかし臨床医学的には、男性と女性を線引きすることは臨床的に有用であり、Y染色体の有無が両者に大きな違いを生み出しているのは否定できないように思います。また臨床精神医学も例外ではありません。その点では臨床心理学の方が生物学的観点にそれほど捕らわれていないため、現代の事象に対して柔軟に対応できるのかもしれません。かなり話が脱線してしまいましたが、従来通りに男性と女性に二分して考えてみます。ただし、以下は経験に基づく仮説なので、単なる印象論のおそれはあります。
多くの男性は学生のとき、人間関係をあまり重視していないようにみえます。良い意味で、周りに干渉せず、周りにほっとかれる。そのため万能空想をいくらか温存したまま、大人になっています。女性から見ると「子どもっぽい」と感じられるゆえんでしょう。社会に出てから人間関係の重要さに触れて、周りに適応する人、周りに適応しようとするが挫折する人、周りに適応するのをはじめから諦める人に分けられるように思います。もちろん男性でも初めから人間関係の大切さに気付いており、コミュニケーション能力が高い人もいます。どのタイプの人が良い悪いとかは本来ないはずなのですが、おそらく多くの人は周りに適応できてコミュニケーション能力の高い人、もしくはそのあり方を「良き人」・「良き人生」とみなすように思います。
臨床精神医学としても、周りに適応できない人をどう扱ったらよいかを考えてきた学問であるように思います。そのなかで、彼ら/彼女らを周りに適応させようと、さまざまな治療法が生み出されてきた歴史があります。現代では、盛んに「その人のままでいい」・「個性を尊重しよう」・「障害はその人の個性だ」といわれるようになりました。臨床心理学はかなり柔軟に世相を受け入れて変化しています。臨床精神医学でも、現代の潮流を受け入れることで、彼ら/彼女らを周りに適応させようとしなくなった気がします。最近は医師が患者さんに「多様性」という免罪符を渡している場面をみかけることがあります。もちろんこれは一つのメタファーですが。ただし、その免罪符に愛情はこもっているのでしょうか。医師は愛情をこめて渡しているのでしょうか。
話を戻します。女性は小さいころから人間関係の重要さに気付いていることが多い気がします。多くの女性は学生のときでも、人間関係を重視しているようにみえます。そこには「気付かされている」といったジェンダー問題があるように思いますが、ここでは触れません。私は学生時代に初期の綿矢りさ(小説家)を読んで、女性の人間関係の濃密さに驚いた記憶があります。女性はどこにいっても人間関係が付きまとっている感じがします。つねに周りを干渉するし、逆に周りもほっといてくれない。そのため万能空想は小さいうちに乗り越え、現実に直面して生きざるをえないように思います。宮島未奈(小説家)の成瀬シリーズの主人公、成瀬あかりは女性ですが、女性の人間関係から徹底的に自由です。主人公は周りをよく観察して興味を示しますが、彼女は過度に干渉しません。彼女には天性の才能があるため、周りがほっといてくれる。そんな描写が多い気がします。この小説が商業ベースでかなり売れているので、それだけ読者が愛情をこの作品に与えたといえるでしょう。また逆に、この作品から読者はおおくの愛情をもらったといえます。
ただし興味深いことに、女性は複雑な人間関係を生きざるを得ないから「生きづらさ」を感じやすく、男性はシンプルな人間関係だから生きやすいとはならないように思います。大人女性が男性社会に入れば人間関係がラクだと感じ、大人男性が女性社会に入ればシンドイと感じるのは間違いないように思いますが。医療界には有名な男性社会と女性社会があります。前者は医師の世界であり、後者は看護師の世界です。
まとまらなかったですが、男性と女性の人間関係の違いを素描してみました。余計なことをいっぱい書いてしまいました。
人間関係とストレス・不安との関係性については次回にします。